本は10冊同時に読め!
著者の成毛眞といえば、マイクロソフト日本法人のトップを35歳で務めた偉人。として語られる。私のような小者がなにをいったところでやっかみにしかならないし、人のことを悪くいうこと自体が天運を逃すような気がして好かないのだが、ひとつの情報として聞いてほしい。
マイクロソフト日本法人とは
誰もが知っているマイクロソフトが満を持して作った日本の窓口ではない。MSKKなどといわれるが、前身はアスキーだ。オタクな分野の情報や雑誌を扱っていたアングラ企業である。つまりはマイクロソフトの代理店ということである。私も色んな保険会社の乗合代理店の代表だが、そんな私が「ナントカ損保のナンチャラ支社長です」といっているようなもの。一定の社会的信用にはなろうが、ビルゲイツを背負うような信用を与えるのは行き過ぎだ。
MSKKは実に無能集団であることは周知の事実。根本的な方向性がわかっていない、日本の市場を理解していない宣伝で、MSの日本のゲーム市場を奪い取る戦略を木っ端微塵に吹き飛ばした。
まったく知名度がないなかでこんなCMばかり流して、Xboxがゲーム機だと理解できる人間がどれほどいたろうか。当時はアメリカかぶれの連中と、斜に構えたオタクどもしかいなかったろうMSKKの内情がことあるごとに透かし見えたものだった。社内にはゲーム市場で敵対関係のソニー側にべったりくっついたエンターブレイン(ファミ通)派閥もあったと聞くし、とにかく終わっていたのだ。アングラオタクサークルから脱せない大人たちの漂着先といっていい。今は角川傘下なので、別の意味で大きな顔をしているのだろうが、本質的には変わらないだろう。
そんな代理店の元社長が偉そうにふんぞり返っている。それは別にいい。本の中身がしっかりしていれば、読書家としても企業家としても、微塵も気にするところはない。人間性とその人間が生み出す富やサービス、幸福は一致する必要はないのだから。
だが、本書を見る限り、見事に人間性と生み出すものが一致してしまった。人と違うことをしてきたから俺は偉いんだ。としかいわない。たまたま入った妙な会社が、運よく代理店になって、無能のなかから消去法的に選ばれた代表者になっただけの「人とは違う」症候群の患者がなにかいっているとしか思えない。
先入観でそう思ってしまっているのではないかと、何度も間を置いて(自身が未熟なせいではないかと思って年単位で間を置いたりもした)読みなおしてみたものの、「中身がない」「二枚舌」「頭の悪さを語気の強さで取りつくろっている」とますます否定的な意見を持つばかり。
文学作品やら世間が認める一般的な人気作、売れているノウハウ本などを否定しつつ、舌の根の乾かぬうちに前述のような本を勧める。自分が読んでいない本はゴミ(庶民になるための本)、自分が読んだ本はいい本(マイクロソフトの社長になれる本)。という価値基準が、いかに奇天烈なものであるか。一貫したもの、培われた理論、磨かれた感性というものが感じられない。芸者遊び(の同伴の最中に自身の知識をひけらかすこと)を自慢するくだりなどは、キャバ嬢に嫌われる旦那衆ナンバーワンのそれである。子どもでも人質にとられて、醜態を晒すよう要求されているのではないかと心配するほどステレオタイプな駄目男である。中身のないままに膨らんだ、麩菓子のような人だ。
ただ、本書を買う価値がないというわけではない。氏のいうこと、為すことの逆を行けばいい。博打の世界には「引き潮の逆に張れ」という言葉がある。流れに竿刺す輩、負けている奴、エラーをした奴の反対を行くことで安定して勝てるという格言だ。確かに、氏のいう通り、つまらない角のない人間になるだろう。ただ、大成はしないかもしれないが、使いやすい、そこそこ優秀なサラリーマンにはなれそうだ。また、本は全部読む必要はないという部分には賛成できる。ただし、ひん曲がった価値観で斜に構えて読み捨てるのではなく、丁寧に先入観なく読んでも、得られるものがなさそうだと感じたら、各段落、各章の結論の部分だけ目を通して、何もないならサヨウナラという形がいいのではないかと思う。
ここまで極まった空っぽの旦那も少ない。こんな人もいるのかと人間観察のつもりで読んでみてもいい一冊やもしれない。
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