2016
05.28

なぜ日本の大学生は世界でいちばん勉強しないのか?

☆☆☆, 四六版, 書評

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日本の大学生はバカになったという。確かにその通りである。しかし、昔の学生(戦後の大学生)と比べても学力が低下したという事実はない。では、なにがその通りなのか。対外的に比較して、日本人の学力が相対的に低くなっているというのである。今、大学生の在り方を考えねば、遠からず日本は衰退する。日本の学びを考える一冊。

 

大学を論じるべきいい年をした面々が、学生運動の火がどうのといってロクすっぽ勉強していない。1年間大学に行かなくとも単位がもらえる特例措置などがあったのだから救いようがない。その上の世代は戦争で空白地帯だし、明治期の大学生=スーパーエリートの系譜は完全に断絶してしまった。その後にやってきたのはバブル景気のおかしな風潮。売り手市場で学生は浮かれきる。企業に寿司だの風俗店だのをあてがってもらってきたわけで、仕事とはなんぞやなんてことはわかるはずもないし、その前段階の勉強とはという部分もまるでできていない。それが大学生の親になる時期を迎えたところで子どもに何が教えられるのか。ましてや少子化に加えて大学、専門学校が増えすぎている昨今。子どもたちは大学に入ることが目的化し、そこに入ることすら簡単になり、「いいところに入れば安泰、ダメなところに入れば人生終了」という二元論で生きている。

 

いまあるところで咲きなさい。などと言葉をかけたところで彼らには届かない。親がそういう時代のアレだから。場合によっては、この苦難の時代にあって、なぜ就職できないのかなどと子どもを責める例もあるという。お前たち親がまともな社会運営をしなかったために訪れた末路が今なのだから、子どもたちになぜ不景気で就職できないのかと責めるのはお門違いも甚だしいと思うのだがどうだろうか。

 

日本の大学生は小学生より頭が悪い

ある調査によれば、日本の大学生は小学生より学ばないのだという。思い返してみればそうかもしれない。人様に比べれば(就職だの司法試験だのではなく、純粋に大学の専門科目を)10倍は勉強したと自負する私も、小学生のころの学びと比べてどうかと思えば、まるで遊びだと思う。小学生のころは50音が覚えられず、必死に書き取っては覚えた。九九も7の段につまずいて、九九を覚えるおもちゃが壊れるまでやり通した。毎日毎日が新しいことの詰め込みで、知らないことに出会い続け、懸命に知ろう、覚えようとしていた。それがどうだ。大学生になってそこまでの勉強ができているかといえば、間違いなく「ノー」である。高い授業料を払ってまで、小学生より学ばない。なんとも恥ずかしいことではなかろうか。ましてや、勉強していない大学生は分数の計算ができなくなって就職するという。小学生よりバカになって出てきて、何が大学か、と。そんな不完全な私ですら、助手、講師の道を用意するからと複数の研究室から声がかかる現状たるや。小学生より学ばない人間に教わるより、小学生に習う方が得るものがあるのではないかと思う次第である。

 

海外の大学は入学は比較的簡単だが、卒業は難しい。だから、学歴だけが欲しいような人間は、卒業できないなら無駄な投資だと進学しない。入学したらば、専門家として身を立てるための学問がはじまる。日本人のようにレポートを書いたことがなくても卒業できるというような甘えた課は少ないのだ。毎週のように特定の教授に課題を与えられ、日々頭を悩ませていく。それが数年単位で続くのだから、高度な学問的知識と柔軟な発想力を手にいれる。高校までの知識の積み上げと忘却のために4年を費やす日本の大学生とはまったく異質といえる。日本人同士で争うならそれでもいい。しかし、国内企業にアジアや欧米から新卒採用される人間が入ってきたらどうなるか。日本の社員は駆逐される。駆逐以前に日本が地盤沈下し、そもそも海外の学生が日本の企業に就職する意味すらない、経済的優位性が崩壊するのではないか。それも、この20年以内に。

 

本書は日本の大学生がバカであることを「最近の若者は」と一杯飲み屋で吹いて気持ちよくなるためのものではない。日本がこの先、ますます一人当たりの生産額で劣り(すでに世界で27位の後進国)貧困国の道を突き進むかもしれない。だからこそ、今から産学官に社会の風潮もあわせて、チームワークで大学生を育てなければならない。そのための指針となりうる一冊である。

 

コメント

    • 理系
    • 2018年 7月 03日

    理系の学生を一緒にして欲しくないかな?自分の例でいくと1日平均講義を除いて5時間以上勉強してるし、周りもそれなりに勉強してる。恐らく文系大学生のことを言っているのだとは思うけど日本の大学生とひとくくりにされるのは不快ですね。

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