2016
05.28

1日36万円のかばん持ち

☆☆, 四六版, 書評

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別にかばんを持っていても36万円くれるわけでもなければ、社長が36万円稼ぐわけでもない。「俺のかばん持ちをしたければ1日36万円。ただし、3日で1セットだから108万円な」というセミナービジネスである。そのセミナービジネスで得られるノウハウを詰め込んだものが、千と数百円で買えてしまう。やったね!という本がこちら。

 

仕事の関係上、様々なビジネスや社長を見てきた私の感想としては、結局のところ「ビジネスは滅茶苦茶できる奴が勝つ」のである。法を犯しても何も思わない。守るべきもののない奴が勝つ。数年で倒産したって構わない。それまでに金を作って騙くらかして、蒸発してやればいいだとか、そもそも違法な物品を売るだとか。そこまでいかずとも、業界の風習や守ってきた地域文化、慣習を破壊して、そこから出たスクラップや廃材(異常な廉売や焼畑的な商売)を小売にする。そんな人間が一番強い。地域の商店街を駆逐し、その後思ったように客足が伸びないからと撤退する大手ショッピングモールがいい例で、後にはぺんぺん草も生えない。成功するだろうけれども、そんな商売を奨励していいものか。何十年経とうともどこかに引っかかる思いがある。

 

ビジネスとはそんな甘いものではない。生き馬の目を抜くような世界なのだからというのもわかる。生ぬるい環境で努力もせずに生きている個人事業主の言い訳として、文化だの社会的責任だのが使われることがあるのも重々承知のうえである。それでも、ルールの破壊者は見ていてきもちのいいものではないし、壊して金にした後のことを考えると、どうにも直視はできない。

 

しかし、こういったビジネスは破壊的で破戒的であるがゆえに客がつく。特に、圧倒的多数の中産、貧困層に効く。ブラック企業と名高い飲食店が平気な顔して回っているのも、結局はこういったルールを無視することを奨励する客の存在にある。そして、日本は民主主義国家らしいので、多数決でなんでも決める。多数決となれば、正しい対価を支払いたいという層は当然敗れ去り、悪平等な価値観がはびこる。安さがすべて。品位は二の次、場合によっては無視してよい。そんな面々に人の心がどうのなどという商売では太刀打ちできるはずがない。

 

人の心を重視しない、暴力的な商売こそが正しい商売なのか。世間が求めるのなら正しいのか。経営者は社員を食わせることが至上命題といわれるが、本当にそんな短絡思考でいいものか。しかし、そうしなければルールの破壊者にすべて奪われてしまう。

 

何年経とうとも、答えは見えない。

 

1日36万円のかばん持ち [ 小山昇 ]
価格:1620円(税込、送料無料)

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