2016
06.08

絶妙な「速読」の技術

☆☆, 四六版, 書評

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この本は30分足らずで読むことができました。本書はご覧の通り速読のためのテキストでして、速読を人に教える講師が書かれております。つまりは名刺本(自分の仕事に箔をつけるもの)や、広告本です。

 

私は速読を習ったこともなく、必要に迫られて自身で工夫してきたのですが、やはりこの本も勝手知ったる内容、平易な文章でなければ分間◯万字などという高速で読むことはできないとしておりまして、人間の脳が理解する過程をすっ飛ばして超高速で読む速読はどうやら「詐欺」の類のようです。冷静に考えれば当然です。見たことも聞いたこともない言語で書かれた文章(理解できないもの、予備知識がないテーマの本の例)を相手に流し読むだけで把握できるのだとしたら、それは魔法の世界ですからね。

 

私は理解する過程を挟まなくてもいいもの、例えば小学生の日記や作文といった日常の文章であれば、1分間に1万字程度で読むことができます。かつて著名人の半生を綴る著作を編集する際に、その方がかつて作った小説を20分程度で読み切り、上司に嘘をついていると疑われた(一方的に怒られた)ことがあります。もっともこのときは15万字ほどの作品を読んでおりますので、1分につき7000字程度ではありますが、1冊の本の内容を大まかに理解するのに30分以下でで済むとすれば、人生のあらゆる場面で大幅な時短になることは明らかです。

 

速読のためのノウハウは、本書を読めばわかります。わかりますけれども、ノウハウを得た瞬間に1万字の高速読書ができるわけではありません。弁護士資格を得た当日から、常勝無敗の弁護士になれないのと同じです。結局は、その先に日々の努力が必要となります。このことを聞いて読むのをやめようと考えられた方は、生涯速読は身につかず、忍従が必要だとしてもなんとか身につけたいと思う方は時短人生を歩まれるのだと思います。

 

学問に王道なし。怠惰を求めて勤勉に行き着くと申します。わずかな努力、わずかな投資すら怠る方は、その先に多大なる損失とリスクを抱えることを忘れてはなりません。

 

なお、お気づきの方もおられると思いますが、本書を読まずとも私は勝手に速読が身についているわけですから、日々急いで本を読む努力をすれば、わざわざ本書を読まなくてもいいということになりますね。その点では残念な本だといえるかもしれません。

 

【蛇足】

著者の佐々木氏は速読の学校を運営しており、その宣伝のためか定期的に同内容の本を出版しておられます。文科省管轄の学校でもありませんから、教科書の検定や改訂はないはずなんですがね。95年ごろからはじめて、近年は毎年同じ内容の本を出しております。もっともこれは、ドジョウ本といって同じ内容の本は同じように売れるので売上予測がしやすく、編集会議に通りやすいだとか、名刺本といって著者が何冊分(500冊とか1000冊とか)買うから出版させてくれといって本を出すパターンがあるわけです。いずれも出版社の姿勢の問題でもあるわけですけれども、金になればなんでもという会社が増えているという事実が、本をすばやく読む力をつけたところで、読む価値がないものばかりなら意味がないじゃないかと思わせますね。一体何がしたいのか、もっと巨視的に構えてもらいたいと思う次第です。

 

「1冊10分」で読める速読術 (知的生きかた文庫)
『頭がよくなる超読書法 (PHPビジネス新書)』
『毎分10万字を読破できる超速読脳トレーニングの秘密』

等々。よくもまあといった感じです。講座を受講する生徒に強制的に買わせているのでしょうか?詳しくは講座で、詳しくは弊社HPでという手法までそっくりそのまま。編集者には意地がないのか。ちょっと信じられませんね。

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