03.12
「サバを読む」の「サバ」の正体
イケメン(イケてる面・イケてるメンズ)という言葉が流行って久しいが、この言葉を聞くたびに、また、時代の先端を行っているような顔で吐き出すのを見るたびに、時代遅れの印象を受ける。
イケメンの源流を探る
そもそもイケてるという言葉は、「いかす」からやってきているわけで、いかすといえばイカ天バンド。89年にはじまった「いかすバンド天国」なる番組はバブルの象徴といっていい。そして、お立ち台やワンレンボディコンと一緒にダサいというイモ判を押されて時代の彼方に追いやられたはずの文化だ。
これを紐解くと「いかす」の文化がさらに見えてくる。89年に番組プロデューサーになるような面々は、当時40〜50代だったと思われる。彼らの幼少期〜青年期である1958年にフランク永井の西銀座駅前というヒット曲に「いかすじゃないか」などと歌われているのである。これを聞いて育った面々が30年後イカ天と口走り、それを見て育った現在の40〜50代が「イケメン」などという言葉を世間に流布しはじめたとみていい。新しい言葉に警戒心を持つ「大人」という生き物が、「イケメン」だけあまりにもすんなり受け入れすぎだと思ったことはなかろうか。こいつの血統は50年の歴史を誇る言葉だったわけだ。
つまり「イケメン」は腐敗臭もしないミイラのような死語中の死語を棺桶から取り出してきたようなもの。イケメンという言葉にそこはかと漂うダサさには、歴とした理由があったのだ。
NHK気になることばの書籍化
本書の内容にほとんど無関係な話をしてしまった。本書はNHKの気になることばのコーナーを書籍化したもので、梅津アナウンサーが読者の疑問や怒りの声に辞書や歴史書を駆使してお答えする名物コーナーでもあった。知った風な口を利く識者気取りの視聴者による「言葉の乱れ」とやらの指摘を、昔からある言葉だった、言葉は変わりゆくもの、今となっては誤用が定着しているといった形で年寄りの肩を持つでもなく、言葉に真摯に向き合う姿は実に感心させられた。
例えばうざいは昔からある言葉であるし、天下は「てんが」と読むべきなのに、言葉の乱れに怒る年寄りすら「ん」の後にくる言葉は濁るという原則を守らない(神社や三階など)。祖父母の両親は着替えのことは「きかえ」といって濁らなかった世代だし、言葉なんて数十年で変わってしまうもので、変えてきた人間が今の若者は〜などというのは滑稽千万だ。
「〜まで」という言葉があるが、「20日まで出社できません」といったら20日に出社してくるのか、してこないのか。してこなかったからといって怒っている人間がいたが、それは本当にあなたが正しいのだろうか。「土曜日まで雨は降らないでしょう」といわれたら、土曜日は降るのか、降らないのか。数人に聞いてみるといい。かなり意見は割れるはずだ。では、「この電車は上野駅まで停まりません」といわれたらどうか。「上野駅に停まる」と考える人が大半となるはずである。なぜか?それは鉄道会社がそういった後に上野駅に停まるためだ。経験的に知っているから、停まると考えるようになる。しかし、一般に「〜まで」はどちらが正しいとはいえない。その人の人生を完全に把握しておかなければ、「〜まで」をどちらの意味で使うかなどわからないのである。こうしたトラブルを防ぐためにも、「出社は20日になります」「次に雨が降るのは日曜日です」と明確にしたほうがいいだろう。とはいえ、タクシーで「渋谷まで」といって、新宿や恵比寿(いずれも渋谷のひとつ先)に連れて行く運転手もいないだろうし、言葉とはなんとも難しい。
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「サバを読む」の「サバ」の正体 [ NHKアナウンス室 ] |
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