バスボート、いいですよね。私も双発機（エンジン2基）のクルーザーのようなバスボートに乗ったことがありますが、まあなんと優雅で満たされた釣りになることか。闘争本能は薄れ、富豪のような気分になり、釣りどころではありませんでしたが。
バスボートが本当に必要ですか
夢のない話からします。私はみなさんにバスボートを売りつけて紹介料をいただくといった商売をしておりませんので、一番最初に心を折りにかかります。それが一番、みなさんにとってしあわせな結果になりやすいからです。気に入らなくても、とりあえず最後までお付き合いください。
30馬力程度のボートなら小型のレンタルバスボートで相場が2万円程度でしょう。2名乗船ならこれで十分。ひとりなら余るくらいです。そんなの嫌だ！湖面を疾走したい！！という人でも、せいぜい200馬力あれば足りますし、そもそも釣りにきているのに湖面を走ることがどれくらいあるのか。ほかの釣り人の迷惑になったり、漁網や杭を引っ掛けたり、あれこれ考えるとそんな機会ほぼないんです。私は20年ほど前の池原でかっとばしたのが最後です。当時は今のような便利なネット環境もありませんから、「相当の好きモノ」しかいませんでした。1日釣りをして、大きなボートを見かけるのが2〜3挺。ほとんどプロの取材でした。だから、すっ飛ばして文句をいうのは魚くらい。今はかつてのバスブームほどではないにせよ、そんなユートピアはまずありませんよね。じゃあ、やっぱりどの釣り場であってもモンスターマシンなんて要らないんですよ。
自分で持てば船検、保険、案外かかるハイオク……。ボートの所有経験者はすぐにこういった経費の話をしはじめてしまいがちですが、このエントリーを読んでいる方は「これから買おうか」と悩んでいる方が中心だと思います。ですので、モンスターマシンの価格について話すのが先ですよね。心して聞いてくださいね。
500〜1000万円……
新艇、バスボートとトレーラー、エレキに魚探でこの価格。牽引するならさらに牽引免許と4WD車が必要です。マリーナ停泊なら使用料。船だけでなく危険物取扱の免許を取って、ただでさえ高いハイオクにプレミア価格を乗せてくるマリーナで燃料を入れず、近所のガソリンスタンドから燃料携行缶で運び込む涙ぐましい努力をしてもスズメの涙です（1日1万円燃料代がかかる）。なんだかんだで本当に優雅な体験をしたければ、家一軒買う覚悟がいるのが本格的なバスボートなんです。で、新艇は無理だからと10〜20年落ちの中古のバスボートを300万円で買えたとして、同性能のバスボートをレンタルする際のレンタル料を5万と見積もった場合、燃料や整備費、保険等雑費、機器の故障が一切なかったとして60回分。もしこれら経費も見積もれば、100回分以上。バスボート以外の車などまで考えていたら、年間のバスボートでの釣行が30回、5〜7年やり続ける人以外、元はとれません。もちろんマイボートで帰港時間も気にせず、のんびりと釣りをする充実感を求めるなら、元をとるというものでもないのですが。まあ、新艇なら語るまでもありませんね。並のトーナメントプロでは（トーナメントの収入だけでは）維持できないのがバスボートなんです。
バスフィッシングとボートフィッシングは別の遊び
バスボートでの釣りはバスフィッシングではなく、ボートフィッシングという別ジャンルの遊びです。釣りが好きだからといってボートが好きになれるかは別問題。ボート（の維持費）が嫌いでも、あなたが釣り好きならそれでいいと私は思います。「ボートフィッシングにたどり着けないのはバスゲームに本気じゃない証拠」などと踏み絵のように語る輩もおりますが、全然です。重ねて断言いたします。全然、無関係です。
言葉を選ばずに申せば、ボートに乗っている自分がかっこいいといった見てくれ最優先で釣りが二の次、ボートの釣りですべてが満たされるといった精神的な支えであるといった、魚との駆け引き以外の部分に軸足があるかどうかなので、ボートでなければならないと思い込んでいたりボートフィッシングが好きな人の甘言に騙されかけているなら、冷静になった方がいいと思います。さらにいえば、バス釣りが好きなのか、ボート釣りが好きなのかだけでなく、本当に釣りが好きなのかどうかもこの際、考えた方がいいかもしれません。考えてもみれば、クルーザーに乗って竿を出すハリウッドスターなんかがいますけれども、彼らは心底釣りが好きなんでしょうか。好きの程度で優劣をつけるつもりはありませんが、クルーザーに乗ってニューヨークの街並みを眺めつつシャンパンが飲みたいのであれば、それは釣りが好きなのではなく、ボートが好きなのです。まったくの別ジャンルです。似ているからと同一直線上にあると思ってはいけません。
自然と触れ合うのが好きなだけなら、高い釣り道具、ましてやボートなどいらないんです。ここを深く鑑みることなく、釣りに飽きてボートの負債で手痛い思いをし、釣り嫌いになる人が後を絶たないわけです。私は釣りはすばらしい遊びだと思っていますから、間違った道へ進んだことで釣りにネガティブな感情を持つ人が出るのは耐えられないんです。ですので、安易にボートを勧めることはないんですね。
でも、ボートの方が釣れるだろ
ボートの方が釣れるかといわれれば、まあ、そうかもしれませんね。というくらいです。ただ、ボートじゃなくてもそれなりに釣れます。人が叩いていないところを叩けるのがボートの強みではありますが、ボートでの釣りはそれはそれで習熟が必要なんです。ボートに乗って岸際を叩き続けるだけなら、オカッパリとやっていることは変わらないわけでして、操船やポイントの発見、攻略などのために数十回は乗っておきたいところです。で、そんなにあなたは乗りますか？ということです。月に1度しか乗らないなら、2〜3年かかるわけですけれども、そんな悠長なことでいいのかと。その間は当然ボウズの日も出てきますし、その都度「ボートなんてなければ」「無駄になった燃料代を考えたら今晩、回らない寿司食えたよな」などと釣りに対して負の感情を積み上げてしまったりする。釣りを嫌いになるためにボートを手にするなんてバカバカしいにもほどがあります。
普段は道具に頼るな、道具のせいにするな、もっとひたむきに釣りに向き合え！と叱咤する私ではありますが、ことバスボートに関しては「バスボートがあればもっと釣れたろうにな」という逃げ道として取っておくこともアリではないかと思います。ボートを持って釣れず、コテンパンにのされて釣りをやめるより精神衛生上、ずっといい。
そもそも、ボートの釣りの強みは「魚探」なわけで、魚探で答えを見て釣りをするのが大嫌いな私にはどうでもいいことですけれども、高性能な魚探を使うならレンタルのアルミボートでもいいんですよ。変なところに所有欲を持っても仕方のないことです。ボートを持ってないのに、持っている人間より大釣りしてやればいい。そして、「ボート持っててそれなの？」と内心ほくそ笑んでやればいいんです。
ここまで書いてもまだ欲しい！という方は止めません。買わないという選択肢もあることを見せるのが本稿の主たる目的ですからね。あなたにとって釣りがすばらしい趣味であり続けることが、一番大切なことですから。
バスボートは将来買いたいなと思ってましたが、かんがえるきっかけになりました。
まだ欲しいきもちはありますけどｗｗｗ