暴れん坊本屋さん 平台の巻/棚の巻 #006

ルポ, 単行本, 書評

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『暴れん坊本屋さん 平台の巻/棚の巻(久世番子/新書館)』

『暴れん坊本屋さん』といえば、出版関係者、書店員、一部の好事家の中でちょっとしたブームになった「マンガ」です。主人公は書店員で本作を描いておられる久世さん自身。書店という変わった人が集まりやすいお店で起こる珍事件や店員ならではの悲哀がちりばめられたエッセイ的作品です。

 

そんな略称「暴本」が装いも新たに再登場しました。単行本の未収録作品と、書き下ろしを含め、お求めやすい価格となりました。本書が人気となったのは、知っているようで知らない、本屋という仕事。その知的で華麗に見える業界が、実は腕力、胆力、体力で支えられているという事実をつまびらかにしたという点にあります。

 

たとえばドン亀のようにトロくさい出版業界の動き。Amazonに注文すれば3日のところ、書店に頼めば3週間。何をいっているんだと思われるかもしれませんが、書店に頼むと本専門の流通機関を通して品物が届くために、アメリカから船便で送ってんじゃねえかってほどに届かない。倉庫が都内にあって、目と鼻の先の書店にも、きっちり3週間かけて本が届きます。私自身がその流通業者(問屋)に頭を下げてプレゼンし、本を仕入れてもらっていたので間違いのないことです(書籍の編集者でしたので)。

 
それほどに出版業界の体質は古く、仕事の速度は江戸時代の飛脚以下。となれば、怒られるのは窓口である書店です。まったく罪もないのに、顧客に不審がられ、なじられる。なんともやりきれない職場。そんな本屋さん、書店員の仕事ですが、健気にもその中によろこびを見いだしながら日々を戦っています。その根底にはやはり、本が好きだという変わらない思いがあってこそ。『泣いて笑って ときどき呪う』という帯の煽り文通りの日常的書店コメディー。それがこの「暴本」です。 書店のバックヤードをのぞいてみたい方はぜひ、ご一読を。なお、サブタイトルの平台とは書店の本棚の下部に付いている平たい台のこと。ここに置かれると表紙が目につき、手に取ってもらいやすくなる本にとってのお立ち台。一方、本棚に置かれればそれまで。背表紙しか見えないためにその商品に強く誘引されてきた客しか手に取らない。平台と棚を上・下巻のサブタイトルにつけるあたり、天と地といわんばかりですね(他意はないかもしれません)。

 

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