採用基準

, 四六版, 書評

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今の日本の企業観、価値観はおかしい。アメリカは、世界は正しい。そして、それを理解している輝かしい私は下民どもとは違うのです。そういいたいだけの本で、いわゆる名刺本、看板本の類。私が編集者なら絶対に作らない本だけど、こういう人を御輿に担いだ方が儲かるわけです。さもすごそうに見せるだけで、権威と「意識高い系」に弱い若人を心酔させられる。版元の経営危機というか、モラルの欠如が見受けられ、とても残念に思う。

 

内容としては、採用の基準がどこにあるのかという話ではなく、日本の企業は組織として不完全だとあれやこれや外国の例を持ち出して語るのみ。当たり前の話ですが、採用基準などその企業ごとに違うわけで、これさえ読めば内定確定!だとか、超優良企業はどの会社もこういう採用をやってます!なんてものはない。そもそも欲しい人材は時と場所によって変わるわけですしね。

 

日本的な採用、企業戦士の獲得方法はいけないということは、ある面としてはわかります。わかりますが、なにか一点に特化した人間を重用しない企業はダメだと吠えたところで、それが日本なのだから、ケンカを売る相手がちょっと違う。経営者が尖った人材を採っても、現場では嫌われて使われない以上、日本人全員を敵にまわしてケンカをおっぱじめなければどうにもならない。日本の企業はバカで、海外の企業(の日本支社)に勤めていた私は偉いのですといいたくて仕方がないのが見え見えで、それをひた隠しにするべく紙とインクの無駄遣いを続けているといった印象。全員そこそこよりも、一点特化の人材をといった舌の根の乾かぬうちから、全員がリーダーシップを持っていないといけないなどというにいたっては、「まあ、マッキンゼーの私は全能力が最高値なんですけど」といっているようなもので、渇いた笑いしか漏れてこない。そんなことをいう人間が対人能力を含め、超優秀なわけもなし。

 

そもそもこの手のコンサルの何が信用できるのか。コンサルというものは、結局、血と汗と涙に加えて自宅を抵当に入れて懸命に働く社長と、そこにぶら下がる社員が成した結果を見て、どうのこうのというだけの仕事。なので私は、自身が経営者として最前線で戦っているコンサルのいうこと以外信用しない。経営者はダメなら会社が潰れ、首をくくることになるが、コンサルはダメでもコンサル料がもらえなくなるかもしれないというだけ。ノーリスク、ヒリつくような勝負を知らないで、統計的、歴史的にこうなるというだけの人間に、本当の経営は死ぬまでわかるまい。

 

典型的な似非コンサルの名刺本ですので、そういう世界で詐欺的に生きたい方にはおすすめします。通常、なくても死ぬまで困らない本ですよ。

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