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見えバスがスレているというのは本当か

バスについて詳しくなり、スレについての認識を改めよう

見えバスはスレている、このフィールドはスレバスが多くて難しい。バスプロですらそんな風に語る「スレ」ですが、私はこのスレについてほとんどが「オバケ」だと思っております。といいますのも、スレている魚というものを皆が知っているつもりでいるけれど、魚がスレているかどうかを確かめた人間がまずいない。オバケのようにその存在を知っている人は多いのに、見た人はほぼいない。そんな存在がスレで、スレといっておけば許されるスレ神話のようなものがあると感じております。

 

スレという言葉の裏にある人間心理を考える

まず、ルアーにスレていると人々が口にするとき、その背景には「スレてさえいなければ釣れる」という思い込みがあります。思い込みといいますか、自信過剰かもしれません。そもそも、魔法でも使えない限り、魚が必ず釣れる方法などないわけですが、「スレてさえいなければ俺の腕なら釣れる」からの「釣れないということはスレているのだ」へ自然と行き着く思考回路は誰しも持ちうる危険因子です。自分の責任を放棄しているわけですから、一向に釣りが上手くならない。でも、本人は自分が悪いと思わないので、釣れないたびにスレ等の環境のせいにして、釣れたときは自分の手柄だと思い込んでいくわけですね。悪循環中の悪循環です。

 

どういうわけかルアーマンはエサ釣りをひどく嫌いますからエサについて知らないことも多いのですが、エサを投げたところで釣れないことだってあるのです。このことはいわれてみれば当たり前で、バカにされている気さえするわけですけども、エサなら確実に釣れるというのはエサ釣りないしは魚釣りを甘く見過ぎているから出てくる発想です。エサですら釣れないことがあるのに、エサの10倍以上難しいルアーゲームでそう簡単に釣れるわけがないんですね。

 

皆さんも何度か水中映像というものを見たことがあると思います。海でも川でも構いませんが、岩場や海底付近にエビやカニ、小魚が群れていて、目の前をひっきりなしに行き来しているのに、フィッシュイーターたちがまったく反応を示さないというシーンを見たことはないですか。環境映像なんかでよく出てくるんですけれども、クエやタイがボーッとして、鼻先を行き交う小魚に反応しない。バスでも同じで、ザリガニやベイトが数十センチの範囲を泳いでも、目さえ動かさないシーンというものがあるのです。では、彼らはスレているのか。もちろん、そんなことはありませんよね? 普段食べているエサにスレることなんてありえないといってもいいでしょう。つまり彼らはやる気がないとき、どんなごちそうが目の前を通り過ぎても行動を起こさないんです。ですから、エサ以上に魅力のないルアーなんぞを構うことはもっと起こらないと考えることが自然かもしれません。となると、「見えバスがスレているのではなく、やる気のないバスが見えている」だけだという仮説が成立します。

 

自分が投げれば釣れる、エサを投げれば釣れる、魚は常にエサを求めている……といった思い込みが、スレというオバケを生んでいるといったお話でしたが、みなさんはどうお考えになりますか? ちなみにエサを投げても釣れないのに、ルアーを投げれば釣れるなんてことも起こるのがルアーゲームです。まったく関係のない話題のように思われるかもしれませんが、エサ釣りをしない人が抱きがちなエサ万能説を覆す根拠になると存じます。いかに自分が魚について無知だったか、もっと詳しくならなければと思う謙虚さが、あなたの釣りをもっと深化させてくれるはずです。安易にスレのせいにしないことが、見えない壁を打ち破るやもしれません。